2013-01-23

PEARL NECKLACE: Soft Opening





アヴァンギャルドとクラブ・ミュージックを千鳥足で
ワープするブルックリン・アンダーグラウンドの新たなる
刺客<パール・ネックレス>によるデビュー・アルバム。


エクスペリメンタルなダンス・グルーヴと、
奇妙な捻じれが後を引くマトモスばりのサンプル&コラージュ、
シンセ、ノイズ、ドローン、メディテーティヴなインナートリップ・アンビエンス。


MGMTのボーカリスト、アンドリューも全面参加、
飛んで、転んで、踊れそうで踊れない、マックス寸止め、
でもトリップ確実な番外地サウンド満載のニクめない一枚。



















パール・ネックレス/ソフト・オープニング
PEARL NECKLACE / Soft Opening

Smalltown Supersound / calentito
(CLTCD-2023 | 2,415yen [tax incl]


TRACKLISTING
1. Another Invocation of the Breath
2. Doorbell
3. Did You Feel It?




4. Radio Love
5. Leak
6. Why Toto?
7. Pearlfriend
8. Don't
9. Ah Ah
10. Wist



▼ ブルックリン在住のブライス・ハックフォードとフランク・ライアンのふたりからなるエレクトロニカ・デュオ、パール・ネックレス。

▼ 『ソフト・オープニング』は、そのデビュー・アルバムで、MGMTのボーカルのアンドリュー・ヴァンウィンガーデン、アレクシス・ジョージオポラス(元タッスル/現ARP)がゲスト参加。

▼ ブライスとフランクのふたりは、シンセ、ドラムマシーン、サンプラーやその他のエレクトロニクス機材を操り、「ポスト・コンテンポラリー」なスタイルの即興パフォーマンスをニューヨーク界隈のギャラリーやヴェニューで披露していた。アレクシス(ARP)がたまたま彼らのインプロヴィゼーションのライヴを見たところから本作の発売元レーベルのスモールタウン・スーパーサウンドへと話が繋がり、アルバムのレコーディングがスタート。アレクシスがシンセやベースを弾き、MGMTのアンドリューもオルガンで全面参加する。

▼ ふたりの愛機は「MPC-1000」とのことで、様々な音の断片をサンプル&コラージュしてスパイス的に散りばめながら、アルバムは、彼らが2000年代に吸収してきた様々なスタイルの音楽 – ハウス、ヒップホップ、エレクトロニカ、ノイズ、ドローン、フィールド・レコーディングなどなど – を、サイケデリック、アンビエント&ミニマルな今様ムードで包み込んで独自の回路からアウトプットしてみせたユニークなサウンドで溢れている。

▼ 米音楽情報サイト「Pitchfork」で先行無料配信されたM③「Did You Feel It?」は、インディー/ダンスの今様スタイルを思わせるハウス・ミュージック・マナーのビートを維持しながらも、ノイジーな音のカケラが淡々と、しかしながら複雑に出入りを繰り返す、突出したディスコ・ノット・ディスコ。抑制をきかせた呪術的なドラムとシンプルなヴォイス・サンプルのリピートで組み立てられたM⑨「Ah Ah」もまたディスコを偽装した謎のトリップ・サウンドで、好事家爆死。

▼ クラムス・カジノ風の酩酊をほがらかに脱線させたM④「Radio Love」、クラスター・マナーのアンビエンスで内へ内へと引き込むM⑥「Why Toto?」やM⑦「Pearlfriend」から、アンドリュー・ヴァンウィンガーデン(MGMT)をフィーチャーした辺境仕様のエレクトロニカM⑩「Wist」まで、多彩なビートや仕掛けで名もなき音の細道を突き進む。

▼ 初期のアニマル・コレクティヴにも通じるとっ散らかったアウト・ミュージック感覚、壊れかけのネジ式おもちゃのような奇妙なループが生みだす絶妙な酩酊とグルーヴ、70年代SF映画のサウンドトラックみたいなビザールなヴィンテージ・フィーリング、ノイズのスパイスなどなどがツギハギされた、不格好ですが、いかにもブルックリンの地下らしい、突出した新しいタレント。